歴食の紹介
1867年(慶応2年)に長州藩主毛利敬親とイギリス海軍キング提督が山口県防府市(三田尻)で会見した際の料理を再現した日英饗応料理をモチーフにした給食を山口大学教育学部附属光小・中学校で実施しました。日英饗応料理は、会見の初日は長州藩側がイギリス側をもてなし、翌日にイギリス側が長州藩の人々を軍艦に招いてもてなしました。そこで、附属光小学校野村祥史栄養教諭が中心となり、令和3年12月に長州藩側の料理を一部再現した献立、その翌日にイギリス側の料理を一部再現した献立による給食と食育を実施しました。
次に、クネンボとは紀州みかんとともに江戸時代までは日本の主流品種で、萩城下の武家屋敷や町屋敷に植えられていましたが、昭和30年代ごろには山口県内では見られなくなりました。クネンボは日英饗応料理の長州藩側の献立にもあり、また、山口県萩出身の幕末の思想家・吉田松陰が獄中で食べています。そのクネンボをフレーバーティーにしました。
歴食の特徴
歴食を給食に展開している例は、今回が初めてではないだろうか。2日間で日英饗応料理の長州藩側(日本)とイギリス側をモチーフにした給食を実施したことで、日英の食文化の比較を児童・生徒が経験することができた。食育として、大学教員による動画で背景や料理を紹介した。
また、クネンボフレーバーティーはクネンボ特有の香りを生かし、将来的に山口県の特産品になることを目指しています。
再現時の苦労した点や、完成時の感想
歴食給食は給食の縛り(栄養価、食材、調理法)の中で、献立を作成しました。今回、日英饗応料理のイギリス側をモチーフにした給食では、骨付き肉を使用しましたが、骨付き肉は火の通りが悪いことから、食中毒予防のため普段給食では使わない食材です。そのため、骨の髄に中心温度計を刺し、完全に火が入るように徹底しました。両日の給食とも児童・生徒に好評で、また、大学教員の動画による食育にも興味を持ったようでした。
クネンボフレーバーティーは、フレーバーティーに入れるクネンボの形態をどうすれば、クネンボの香りが生かせるかという点を試行錯誤しました。
取り組んでいる団体の紹介
山口大学・山口学研究プロジェクト「山口・食の温故知新 〜長州食材・料理を復活し新たな価値を見出す〜」では、江戸時代後期の史料を基にして、現代科学のデータサイエンスやDNA分析技術により、「幻の長州食材(クネンボ)」を復元させることで過去の食文化を現代に甦らせ、食材の栄養学的・生理機能的な評価を行っています。同時に、過去の調理法を再現することで、復元食材の料理としての評価も行っています。復元した長州食材に加えて、現存する長州食材についても、科学的な価値以外に歴史的価値や文化的価値を付加することで、「食」を中心とした山口の魅力を再発見し、地域に発信しています。