嬬恋くろこ

                   
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歴食の紹介
ジャガイモは、南米アンデス山地が原産とされ、耐久性・貯蔵性に優れ、耕作が容易、栄養価も高いという利点から世界に広まった食材です。
日本には慶長3年オランダ人によりジャカルタからもたらされ、江戸時代に何度もあった飢饉の度に、飢えをしのぐための作物として広まりました。
嬬恋村では天明(1781~1788)の時代に、越後の屋根職人が持ち込んだのが始まりとされ、嬬恋の風土(高冷地で火山灰土)に適していた事と、度重なる
凶作の際、救荒作物として普及し、生産量を増やしてきました。ジャガイモは、キャベツが嬬恋村の主要作物になる前の、重要産物として主食の一翼を担っておりました。
先人達はジャガイモに含まれる成分(澱粉)に着目し当時希少価値だったカタクリ粉(片栗粉)として付加価値をつけて信州方面に販売し現金収入を得ていたようです。
その量はたいへんな多さで、村中を流れる水路は片栗粉製造過程で発生した泡で覆われる程だったと伝えられています。
くろこは、凶作が続き春になり食べ物が底をついたとき、先人達が、屋外に放置してある澱粉を抽出したじゃがいも搾りかすに着目した事が発祥とされています。
先人達は、僅かな匂いの発する繊維の灰汁を抜き自宅にあったネギと味噌を加え囲炉裏で焼いて食べ空腹を満たしたのです。
その後、先人達が試行錯誤を繰り返し、郷土料理「嬬恋くろこ」が完成しました。戦後の高度成長期に入ると手間のかかる「嬬恋くろこ」の生産は次第に少なくなり、
手軽に入る食材に変わって来た事と、高齢化で「くろこ」を作る人は僅かとなる中、十数年前に「くろこ」保存会が発足され、現在も啓蒙活動を続け、今日に至っています。

歴食の特徴
「嬬恋くろこ」の成分は95%が消化されない植物繊維で、残り5%は現代人に不足しているミネラル分が占め、
明治大学農学部の早川研究室の分析結果によれば「嬬恋くろこ」の機能性として大腸がんの予防効果、コレステロールや血圧の上昇抑制効果、
さらに排便作用及び整腸作用などに効果が期待されるとされ、健康食品と言えます。
また、「嬬恋くろこ」は商品にならない規格外のジャガイモから澱粉を採取した残りの植物繊維部分なので、廃棄分はほぼなく常温保存(エネルギーを使わない)で良く、
地球に優しい食物で、SDGsの取組にも合致していると言えます。
「嬬恋くろこ」料理のひとつであります、「嬬恋くろこ」の原材料(味噌・ネギ)は、全て村の産物で、製造方法、食べ方まで村独自で、ジャガイモの摺りおろし機は、
嬬恋村で発明・開発したものであり、「嬬恋くろこ」は100%地元で完結する歴史ある全国でも希に見る健康食品と言えます。
令和3年春から、発酵の権威である高崎健康福祉大学の教授ら3名により、分析や利用方法などの共同研究に参加いただき、今後の進展が期待できます。
私たちは、この嬬恋村の歴史に育まれた食材「嬬恋くろこ」を後世に伝承する役割と地域活性化のために役立てたいと思っております。
すでに、地元の宿泊施設と飲食店では「嬬恋くろこ」を提供しておりますが、新たなメニュー開発にも取り組んでいただいております。

再現時の苦労した点や、完成時の感想
嬬恋村西部4地域で作られていた「くろこ」ですが、高齢化が進み作れる人が少なくなってきた事と、ほぼ全ての工程が手作業の為、生産量が少なく
現状では、多くの皆さまに提供できる体制とはなっておりません。
嬬恋村が誇る郷土料理「くろこ」が伝統の特産物・地場産業として嬬恋村に定着し、より多くの皆さまに知っていただき、発展させていくことが私たちの願いです。

取り組んでいる団体の紹介
群馬県 嬬恋村「くろこ」保存会
嬬恋村の伝統的な保存食「くろこ」の持つ食としての栄養価はもちろんのこと、
嬬恋村の文化や先人の知恵を含めて、その製法や調理法などを保存継承し嬬恋村独自の食材として広く世の中に啓発していくことを1つの目的とし、
その調理方法に創意工夫を凝らし、嬬恋村の特産品として開発を推進することにより、村全体の地域活性化及び観光振興を図る活動をしています。